これまでに携わったプロジェクトで使用してきたスケジュール管理用WBS・ガントチャート(Excelファイル)を汎用化し、シェアウェアとして公開しています。使っていただけるとうれしいです。(お試し期間は最初にファイルを保管した日から14日間)
1. 作成のきっかけ
WBS・ガントチャートを作成するためのツールはフリーソフトおよび商用のものが数多く提供されており、形態も専用プログラムやExcelファイルなど様々です。使用するテンプレート(Excelファイルなど)を社内標準として作成し使用している企業も多いと思います。
また、Redmineなどのプロジェクト管理ソフトを社内に導入して活用しているプロジェクトも多いと思います。実際に使ってみると、チケットを使用したメンバー間のコミュニケーションとその記録や進捗状況の把握などがしやすくなるよう工夫されています。
ただ、使ってみるとそれぞれ課題があり、いまいちしっくりこないというのが正直な感想です。例えば...
- 作業項目の登録が専用のユーザインタフェースになっていて、それを使って数百の項目を入力するのはしんどい
- 作業項目登録後の項目追加や細分化がしにくい
- 長期的な予定と状況の概要が把握しにくい
日単位の実際の状況、担当者ごとの状況がわかりづらい
予定の作成に重点が置かれた仕様になっていて、日々の最新状況を把握できるよう考慮されていない
社内に管理者を置き、プロジェクトから管理者に依頼しなければならない作業が存在する
- ガントチャート内の日単位のセルを手作業で色付けしたり、図形描画を手作業で修正する必要がある
などなど、思い当たることが多くあるのではないでしょうか。
結果として、作成したWBSがPM・PLのみが日々時間をかけて更新する状態になってしまい、メンバとのステータス共有の役割を果たしていなかったり、プロジェクト計画時のまま更新されることなく進捗管理が別途(?)行われているといった状況も少なからず見受けられます。
メンバ全員が予定と最新のステータスを容易に把握でき、しかも最小限の操作で状況の更新ができるロードマップとして活用できるようにしたい、また専用ソフトを導入をすることなくWBS・ガントチャートを運用する必要もあったため、Excelで作成してみました。
2. 特徴
2-1. わかりやすく、シンプルに
前項に記述したとおり、操作がシンプルでかつわかりやすくないとプロジェクトメンバに使ってもらえないし、わざわざ自分で作成する意味がなくなってしまいます。
以下の点に留意しました。
- タスク項目の入力がシンプルであること
- 進捗状況がわかりやすく表示されること
- Excelの標準的な操作で使えること(値の入力、行の挿入・削除、セルのコピーなど)
- ステータスの更新や書式の再設定などの操作がしやすくなるようメニューウィンドウを表示
2-2. Excelの条件付き書式を活用
本ツールを作成する上で工夫した点の1つは、Excelの条件付き書式を活用したことです。開始予定日、終了予定日、実際の開始日と終了日を入力すると、入力した日付を元にガントチャート内に自動で描画されるようになっています。1行内に2色のバーを表示する設定はExcel標準の操作ではできませんが、VBAのプログラム実行により設定することができます。四角形などの図形を使用しない条件付き書式による表示なので、必要に応じてガントチャート内のセルに文字列を自由に入力し、最前面に表示させることもできます。
その他、日付が今年の場合はm/d形式で、異なる年の場合はyy/m/d形式で表示するようにしたり、罫線の描画や休日の表示などでも条件付き書式をフル活用しています。休日が土日以外の場合もオプション設定でカスタマイズできるよう考慮されています。
条件付き書式を使用する場合の注意点の1つとして、セルのコピーなどで書式の設定が消えてしまったり設定が細切れに分割されてしまう点がありますが、メニューウィンドウ内のWBS更新ボタンをクリックした際にシート内に定義済みの条件付き書式を一旦すべてクリアして再設定し直すことでこの問題を解決しています。
2-3. 状況の表示
本ツールを作成した主目的の1つは、タスク項目の状況が明確に把握できるようにすることです。同一の入力状態でも日付が変わると状況が変わりますので、メニューウィンドウ内のWBS更新ボタンをクリックして手動で状況を更新するようにしました。 V7.0以降はタスク情報の入力後に状況を即時更新する設定とメニューウィンドウ内のWBS更新ボタンをクリックして手動で状況を更新する設定のいずれかを選択できるようになっています。
遅延が発生している項目のほか、着手中・直近の完了・近日着手予定となる項目も更新されます。Excelのフィルタもセットされているので、要確認タスクのみを表示することもできます。
2-4. タスク関連の表示
各項目において、先行タスクの番号を指定することにより、タスクの関連を矢印で表示させることができます。矢印の描画は3つのパターンから選択することができます。タスク項目(Excelシートの行)が追加・削除された場合は、指定されたタスク番号が自動的に変更されるようになっています。
2-5. 週間WBSの表示
長期的観点で状況が俯瞰できるよう、週単位での表示シートも合わせて作成するようにしました。
2-6. 多言語サポート
日本語以外の言語への対応もできるようにしてみました。
「はじめに」のシートで言語を選択すると表示言語が切り替わるようになっています。
ガントチャート内の月・曜日の表示と、祝日などの休日を設定するための「カレンダー」シートでは、Excelが提供している標準機能を活用してロケールID(LCID)による多国語の表示を行っています。
説明文など全般の記述は日本語と英語に対応しています。作業項目などを入力した後に表示言語を変更しても入力済のデータは全て保持されます。
(現状では、日本語以外を選択すると説明文は全て英語表示となります。他の言語については、表示する仕組みは既に作りこんであるので、非表示シート「NLS Guide」の情報を元に誰か翻訳してくれる人がいるとありがたいと勝手に望んでいます。)
2-7. その他のオプション
ガントチャートに表示する期間、年月日の表示形式、休日となる曜日指定、ガントチャートのセルの幅、種類ごとのセルの色指定とタスクの関連を示す矢印の色指定など、様々な属性のカスタマイズが可能です。
3. 有用性は?
私が担当したプロジェクトにおいては、各メンバーが担当するタスク項目の開始日・終了日・進捗率を適宜更新するという合意のもとで運用してきました。
週次(状況により日次)の進捗会議においては、このガントチャートを表示しながらステータスを確認し、必要に応じて課題の記入やタスク項目の追加・細分化などを行い、プロジェクト全体および各担当者の状況と課題について情報共有することで共通認識を持った状態で進めることができました。
担当した複数の企業で実際に使用しながら改善を重ねていった実績があり、有用性はかなりあると自負しています。
シェアウェアにしたことについて
世の中にはものすごい機能を提供しているフリーソフトがたくさんあり、私自身その恩恵にあずかっているものも少なくないのでフリーにしてもいいかなとも考えたのですが、どのくらいの価値を認めていただけるか試してみたかったので、シェアウェアとして最低限の価格を設定させていただきました。ご容赦のほど。
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